「第1回上映後Q&A」

○独語字幕版・満席 
(司会) ウルリッヒ・グレゴール【フォーラム部門・ディレクター】

(通訳) 梶村 昌世

(出演) 森﨑  東【監督】

     倍賞美津子【女優】

     志摩 敏樹【プロデューサー】

 まるで石切り場からごっそり切り取ったような、重量感ある真四角な建物。
 ホールは真紅のビロードに包まれたような壁に黄色い照明が灯る内装。まさにヨーロッパ的な劇場である。
 司会のグレゴール氏に招かれ、森﨑監督、倍賞さん、志摩プロデューサーが舞台に立つ。客席からの喝采に応えて監督、黒いキャップをとって深く頭を下げる。倍賞さんは両の掌を、肩の辺りで明滅させるように結んで開いて。いつ見ても可愛らしい挨拶である。森﨑組番頭のように慎ましく続く志摩プロデューサー。
 上映直後の客席からの熱気が、舞台上を包み込む。

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●グレゴール「まず一言。今回ここで森﨑監督の作品を紹介できることをわれわれは大変うれしく思っています。なぜかというと、われわれはこの映画を《東京のフィルメックス映画祭》で発見したのですが、日本で聞くと監督の作品は日本では非常によく知られているそうですが、にもかかわらず海外ではいまだ森﨑東の名前はあまり知られていません。もしかすると今回、このベルリン映画祭での上映をきっかけに、森﨑東の名前が世界に飛び出すのではないかと、われわれは期待に胸を膨らませているからです」
     ◆同調する観客の拍手。
●森﨑「まずお礼を一言申し上げます。私は監督になりまして40年ほどになります。この長い間にこれだけたくさんの海外の方が私のフィルムを見てくださるというのは、まったく初めてのことでありまして、まるで夢を見ているような気持ちです。ありがとうございます」
     ◆拍手。
●グレゴール「それではまず私から質問ですが、主人公の男の子(勇=サム)は、知的障害という設定になっていますが、知的障害者を物語の主人公にするのはとて も珍しい事だと思います。どういう期待や気持ちを込めて主人公を描いたのですか」
●森﨑「長年にわたり映画に携わり、且つ日本人として生きてきましたが、私はあまり人の言うことを信じられないような気になってます。特に政治家の言うことなどはまったく信じられないという気持ちがありまして。ただ、1つだけ信じられる気がしたのは、知的障害者の親御さんたち、特にお母さんたちがよくおっしゃる言葉です。『私はこの子のために生きている気がします。この子は私の生甲斐です』と、はっきり仰る親御さんが多いんです。私は最初、その言葉さえも信じられなかったんですけども、ある日、信じられるようになり、映画にしようと思いました。『私はこの子を隠そうとは思わない。他人の眼(まなこ)から、絶対に隠そうとは思わない。むしろその逆で、この子の面白さをいろんな人に知ってもらいたい。皆さんにお見せして歩きたいくらいです』そうおっしゃったお母さんがいて、私は思いました。お母さんがお見せになって歩かなくても、私が息子さんを映画にして皆さんにお見せしたい。そう思ったわけです。ある意味大変重い気持ちでもありましたが、その言葉を聞いて頑張って撮ろうという気になりました。
 …いささか喉がカラカラになっておりまして、お聞き苦しいかと思いますがお許し下さい。皆さんを前にお話しするうち、緊張してきました」
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●グレゴール「(笑)では、倍賞さんに質問します。森﨑監督とは今までにどれくらいの作品をご一緒されているのですか」
●倍賞「6、7本でしょうか…とにかく私の中では一番多くご一緒した監督です。監督が第1作目に撮られた作品が、私の主演第1作目の作品でした」
●グレゴール「今回の作品は、本来は重いテーマで、いろいろな面で、役もとても難しかったと思います。演じられていかがでしたか」
●倍賞「どんな映画でも撮っている時は、いろんな面で大変なことがあるんですけど、この映画を撮ってる時は、スタッフとのコミュニケーションも良かったし、本当に毎日が楽しかったですね」
●グレゴール「観客の皆さんもいろいろお聞きしたいでしょうが、もう少し待ってください。あと1つ2つ質問したいのでその間、質問を考えるのに使ってください。
 ロケーションについてお聞きします。今回、舞鶴という街は非常に珍しい風景を持った場所ですが、どういう理由で舞鶴を選んだのですか。監督と舞鶴に何か深い関係でもあったのでしょうか」
●森﨑「そのいっさいのお答えを、プロデューサーの志摩さんから代弁してもらいます」
●志摩「私は、映画監督・森﨑東の大ファンでありまして、実は日本でも有名な監督なんですが、今までお撮りになっている本数が非常に少ないんですね。先ほどおっしゃられたようにキャリアは40年になるわけですが、監督作品は今回で24作目、しかもこの作品を撮ったのは五年ぶりなんです。私は、森﨑東の新作が観れないことに、日本で憤りを感じておりまして、監督のご自宅へ参りまして、《内容については一切制限致しません。今やりたいテーマでお好きに映画を撮ってください》と、お願いしました。すると、じゃぁ、志摩の故郷で撮ろうということになりました。舞鶴というのは、私の故郷なんです」
●グレゴール「志摩さんは映画を観て、ご自分の故郷にご満足ですか」
●志摩「お願いして本物の警察で撮影させてもらったわけですが、ご覧のとおり警察に対する皮肉が色濃い作品になっています。今後舞鶴で生活するにあたって、警察からマークされているのではないかと非常に不安になって、困っております」
     ◆場内、笑い声と拍手に包まれる。
●グレゴール「お待たせしました。観客のみなさん。どうぞ」

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